千手観音菩薩立像 唐招提寺 金堂
奈良時代 木心乾漆造・漆箔 像高536.0cm 〈国宝〉
衆生救済の決意をにじませた強い表情、堂内の高みから注がれる微かに憂いを含む鋭い眼には、さまざまな境遇の人々に対する痛切な思いが込められているようだ。千手観音は、本来千の手を有し、それぞれの掌に眼が描かれ衆生を隈なく見渡して、救いの手を差し伸べるという。本像も953本の手が現存し、中には墨書きされた眼の残る手もある。唐招提寺は、奈良時代に日本に正式な戒律を伝えた唐僧鑑真が戒律道場として開いたが、金堂など諸堂が整ったのは奈良時代末~平安時代初めとされる。本像もそのころの作だが、奈良時代以来の技法である木心乾漆によって制作されている。木彫の表面に木屎という木粉の練り物で塑形しているため、柔らかな質感が醸し出されている。
〈仏像解説〉山崎隆之
〈写真提供〉飛鳥園
[ 奈良仏像カレンダー2019 ]
Client:奈良県(ビジターズビューロー)
Supervision:山崎隆之
Art Direction:立花幹也
Design:Yellow dog studio
Calligraphy:西山明彦(唐招提寺 長老)
Photo:小川光三(飛鳥園)
Printing:岡村印刷工業