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十一面観音像 室生寺(むろうじ)金堂
平安時代 木造彩色 国宝

<室生山(むろうさん)の信仰と十一面観音像>

神の座ます山を御室山(みむろのやま)と言い、ミムロ・ムロ・ムロウと転訛して室生(むろう)となりましたが、円錐形の室生山は如何にも神山に相応しい姿で、その山麓に開かれたのが室生寺です。
その金堂には釈迦像を中心に五尊の像が安置されていますが、釈迦像は元は薬師で、脇侍に十一面観音と地蔵菩薩を配した三尊形式であったと考えられています。
後藤大用(ごとうだいよう)の『観世音菩薩の研究』によると、十一面観音の前身は、古代インドの十一荒神(じゅういちこうじん)という天候を支配する恐ろしい山の神で、これを供養して善神に転じたとしています。この観音も山に縁が深く、天候や雨水を支配すると信じられています。

写真・解説/小川光三(飛鳥園)